今、アメリカで、あるライブ配信者の逮捕がインターネットの枠を飛び越え、全米ニュースを揺るがす大事件へと発展している。
男の名は、Chud The Builder(チャド・ザ・ビルダー)。
本名はダルトン・リーヴァイ・イーサリー。テネシー州在住の28歳である。
彼は「言論の自由」を盾に、公共の場で人々を執拗に挑発する過激なストリーマーとして知られていた。しかし、その暴走の末に待っていたのは、白昼堂々の銃撃事件という最悪の結末だった。
2026年5月13日、ChudTheBuilderはクラークスビル市内のモントゴメリー郡裁判所の外で、Joshua Fox(ジョシュア・フォックス)氏と口論になり、銃を発砲。これにより殺人未遂容疑で逮捕された。
複数回の発砲によってジョシュア氏は腹部と肩を撃たれ負傷。一方、ChudTheBuilder自身も誤って自分の腕を撃ち抜き負傷している。
保釈金は125万ドル(約1億8千万円)という異例の高額に設定され、事件は全米で大きな注目を集めることとなった。
ChudTheBuilderことダルトン・イーサリーは、もともとテネシー州で建設作業員として働いていた人物である。
しかし2024年末から2025年初頭にかけて、黒人女性とその娘に対してあおり運転を行い、さらに窓越しに人種差別的暴言を浴びせる動画が炎上。結果として勤務先を解雇された。
だが彼は、この解雇を自らの行動の結果とは受け止めなかった。むしろ「社会から不当に排除された」と捉え、その後、報復的ともいえる過激な差別コンテンツ制作へ傾倒していった。
ChudTheBuilderは街中で見知らぬ人々に絡み、人種差別的暴言、いわゆる「レイシャルスラー」を繰り返しながら相手を意図的に怒らせる、“Rage Bait(レイジベイト)”型の炎上配信を行っていた。
特に黒人に対してNワードを連発した。特にNaではなく、より差別的なNerの方を使用している。YouTubeのコミュニティガイドラインの関係上、動画内では詳細に説明できなかったが(以前Jap5の動画では名前の由来を詳細に語りすぎで収益不可となってしまった)「誰が、どういう文脈で、どちらの言葉を使っているか」によってこの二つには、決定的な違いがある。
まず、大前提として、どちらも公の場で使用すべきではない言葉ではあるが
N***a(*ガ)は、黒人同士で親しみ・仲間意識を込めて使われることが多く、日本語訳のイメージだと「(黒人の仲間内で)なぁ、お前」「兄弟」「ダチ」「あいつ」に近い。そこに差別の意図はなく、むしろ強い信頼関係や同胞意識を表す。歴史的に抑圧されてきた黒人コミュニティが、かつて差別語だった言葉をあえて自分たちの間で再定義(「-er」から「-a」)し、「親しい仲間」 を呼ぶスラング。ラップの歌詞などで頻繁に登場するのはこちらである。
N***er(*ガー)は純度100%の差別・侮蔑語だ。
日本語訳のイメージは「黒ん坊」「非人間的な扱いとしての黒人」。奴隷制や人種隔離の歴史の中で、白人が黒人を非人間化し、見下すために使ってきた極めて攻撃的な言葉である。現代の社会(アメリカなど)では、公の場でこれを発言することは社会的抹殺(キャリアの終了)を意味するほどの「絶対的なタブー(N-word)」とされている。誰が使おうと、強い悪意や憎悪、あるいは決定的な無知として受け止められる。
さらに「Chimpin' out(チンピンアウト)」という差別的なインターネットスラングを多用。この言葉にはチンパンジー(Chimp)のように「原始的・野蛮に暴れ出す」という、黒人を猿に例えて知能・文明度を貶める極めて下品で人種差別的な意味合いが含まれ、19世紀〜20世紀の人種差別プロパガンダ(黒人を猿や類人猿に描く描写)と直結する、古典的な dehumanizing(非人間化)手法である。
彼はこの言葉を繰り返し使って相手を激しく煽りながら、「チンパンみたいに暴れてみろ」「バナナ食べるか」「俺はお前らのために18発の弾を持っているぞ(銃による殺害の示唆))」と銃を示唆する発言まで行っていた。
彼が放った言葉の悪質さは、単なる「口の悪い暴言」の域を完全に超えている。さらに人種差別発言に留まらず、具体的な武器(銃弾数)を提示して命を脅かす行為は、多くの法域で犯罪行為とみなされるレベルの内容と言える。
さらに、離れようとする相手を執拗に追い回したり、自分の帽子を飛ばした黒人男性に対して路上でペッパースプレーを噴射するなど、危険な嫌がらせ行為も確認されている。また、差別発言に反対した白人に対しても容赦なく侮辱を行っていた。周囲から止められても、彼は「これは言論の自由だ」と反発し続けた。
この過激なコンテンツスタイルは、一部ネットユーザーから支持を集めた一方で、「ヘイトを煽る危険な行為」「公共の秩序を乱している」として強い批判を浴び続けた。
実際、テネシー州内の複数のバーやレストランから出入り禁止処分を受け、配信プラットフォーム「Kick」からも2026年4月末に無期限BANされている。
さらに5月9日には、ナッシュビルの高級ステーキ店で店内配信を止めるよう求められた後、約400ドル(約63,000円)の会計を支払わず退店したとして逮捕されるなど、トラブルを繰り返していた。
そして2026年5月13日午後1時20分頃、借金関連の民事裁判のため裁判所を訪れていたChudTheBuilderは、ジョシュア・フォックス氏に対して人種差別的暴言を吐いたことで口論となり、発砲事件へ発展した。
彼は事件後もライブ配信を行い、その音声の中で「殴られたため正当防衛で撃った」と主張している。しかし、地元メディアが入手した逮捕令状によれば、彼は争いが始まる前に体を斜めに構え(bladed stance)、ジャケットのポケットに入っていた銃へ手を伸ばしていたとされる。
また本人は、「ジョシュア氏が自分を指差して笑っていたため近づいた」「“あっちへ行け”と言われたので一度離れたが、相手が追いかけてきて、“これ以上チンピンアウトと言うなら殴る”と警告された後に殴られたため撃った」と説明している。しかし、彼の過去の配信では、相手から「離れろ」と言われても執拗に付きまとい挑発を続ける行動が常態化していた。そのため、彼の主張に疑問を抱く声も多い。さらに、現場を撮影していた目撃者の映像では、Chud側が攻撃的姿勢を取っているように見える場面も確認されている。
被害者のジョシュア・フォックス氏は、31歳の元アメリカ陸軍退役軍人であり、2児の父親でもある。彼はPTSDを抱えており、過去には複数の前科も存在する。また2024年と2025年には家庭内暴行の重罪容疑で逮捕された記録もある。Chudの支持者らには、彼の前科を理由に「差別や脅迫を正当化」しようとする動き(「因果応報だ」「ろくな人間じゃない」というロジック)も見られている。フォックス氏が過去に犯したとされる罪やドメスティック・バイオレンスは、決して容認されるべきものではなく、それは司法の場で厳正に裁かれるべき問題である。しかし、「被害者に前科があること」と「目の前で凄惨な人種差別・命の脅迫を行っていいこと」は全く別の問題だ。
さらに、この事件をめぐっては、メディアから極右政治活動家、白人至上主義者などと評されることの多いニック・フエンテスが、ChudTheBuilderを強く批判したことでも話題となった。フエンテスは、Myron Gaines(マイロン・ゲインズ)、Sneako(スニーコ)、Jason Whitlock(ジェイソン・ウィットロック)ら、Chudを擁護・支持していたインフルエンサーについても「反黒人的な差別主義者」であるとして非難している。
現在、フォックス氏には被害者家族が立ち上げたGoFundMeには約26万ドル(約4,100万円以上)の寄付が集まっている。
一方で、ChudTheBuilder側のGiveSendGoにも約26万8千ドル(約4,300万円以上)の寄付が集まっており、双方にほぼ同額の支援金が集まる異例の事態となっている。また、彼に関連するPump.fun上のミームコイン価格も急騰した。
通常、アメリカでは保釈金総額の約10%を支払えば保釈されるケースが多く、この寄付金額であれば十分対応可能とみられていた。しかし検察側が寄付金を保釈金に充てることへ否定的姿勢を示したため、現在も彼は拘留されたままとなっている。
テネシー州では街中で銃を携帯すること自体は合法である。しかし今回の発砲については、法律専門家や地元メディアの間でも「正当防衛が成立する可能性は低い」との見方が広がっている。ChudTheBuilderは裁判で125万ドルの保釈金を告げられた際、ショックを受けた様子で目を閉じていた。法廷内には黒人保安官も立っていたが、その場で差別的暴言を吐くことはなかった。
現在、彼は殺人未遂など複数の重罪で起訴されており、有罪となれば最大で約56年の懲役刑に直面する可能性がある。